日常

#39俺と親父

よう子分ども

無職になって半年が過ぎたんだがよー

最近はよく親父のことを思い出しちまうんだ

俺様と親父は10年以上疎遠になってんだけどさ

最後に会ったのはまだ両親が別居する前の学生の頃だった

最後に親父が放った言葉を今でも憶えている

「お前!俺の精子の分際で生意気なんだよ」

きっかけは忘れたけどな

言われちまったことだけは覚えているんだぜ

それからずっと会ってねえ

連作先も知らねえし

どこで生きているのかも分からねえ

ちなみに母親と兄貴とはよー

ちょくちょくラインってやつで連絡をしている

そんでよー

なんで今頃になって親父のこと思い出すのか

改めて考えてみだんだよな

思えば親父は無職のことが多くてさ

いつだって母親が苦労してばかりだった

いつかのクリスマスなんかよー

俺様の友達がゲームキューブを買ってもらったから

俺様もどうしても欲しくなっちまって

母親に向かって

「サンタさんにゲームキューブお願いする」

って言ったんだ

そしたら母親が

「うちのサンタさんは赤字なの」

って言っていたっけな

それくらい俺様が幼いころから

お金にはいつも苦労していた

そしてその原因は親父が無職だからと

幼いながら心の中で思っていたのかもしれねえ

だから知らずと親父に対して生意気で

リスペクトがなくなってしまって

それが親父にも伝わっていたんだろうな

しかも俺様は最低でさ

そんな無職のことが多かった親父のことを

いつも学校でネタにしていたんだ

中学生とか高校生の時によー

家族の話題になったりすると

「俺の親父無職だからさー」

なんて笑いのネタにしちまっていた

最低だよな

まじでクソ野郎だよ

どうして親父が無職だったのかも知らないのに

親父にとって一番応援してほしい息子がよ

バカにして笑い物にしてんだぜ?

親父に言われた

「俺の精子の分際で」

って言葉よりもよっぽど酷かったと思う

そして今は俺が無職だ

もしも俺が無職を誰かにバカにされても

そいつは仕方のねーことだよな

俺がやったことが返ってきたんだからよ

親父はもっと辛かったかもしれねえ

でも苦しんでいる母親を見ていたらさ

当時はどうしても親父と反発しちまったんだ

俺と親父はそんな関係なんだけどさ

いつだって親父のことを考える時は

9割くらいが楽しかった思い出なんだよな

とくに4歳くらいまでは親父のことが大好きでさ

親父のことを本気でウルトラマンだと思っていた

まだ親父が無職になる前だったんだけどな

夜遅く帰ってくる親父を眠気と闘って待ったもんよ

母親に寝ろって言われても

寝たふりだけをしてさ

玄関のガチャって音が聞こえたら飛び起きるんだよ

そうして限界に俺が向かうと

決まって親父が言うわけよ

「今日も3匹怪獣を倒してきたぞ」ってさ

最高の親父だったぜ

小学生の頃もさ

パチンコの景品でPSの『鉄拳3』を取ってきてくれて

よく一緒に対戦したのを憶えているぜ

親父がまるで子どものようにはしゃいでたな

懐かしすぎるぜ

そんでよー

母親と兄貴は読書家だったんだが

親父は全然本を読まねえのな

でもなんか本棚には北方謙三の小説が大量にあってさ

そいつはどうやら親父のバイブル本だったらしいんだよ

一度親父にどんな小説か聞いたことがあってさ

そん時に「ロボがカッコいい」って言ってたんだけど

もちろん何のことかは分からなくてな

今になって俺様は北方謙三の小説をkindleで読みまくってる

そうすることで少しは親父を理解できると思ってさ

もう15冊くらいは読んで

ロボが何のことかも知ったし

なんとなく親父の目指していた「漢」ってのが分かってきた気がする

これが俺と親父の関係なんだが

やっぱり親子なんだと思うぜ

でも俺は親父とは違うし

親父も俺とは違う

どこかで心が繋がっていればそれでいいさ

少しでも親父に償えるように生きていく

まだ親父に逢う勇気はないからさ

俺様が本当のボスになるまで生きていてくれよ

この話はこれまで1人にしか話したことねえんだが

ブログを通じて親父に届いたらなーなんてよ

甘ちゃんの俺の発想らしいぜ

でもよー

これから俺様は必ず最強最高になる!

付いて来いよ子分ども

ダーツのプロでも活躍してさ

親父の元まで名を届けるんだよ

「お前の精子は立派に成長したぞ」ってな

俺様の進化を見せ続けてやる

お前らのことも引っ張っていくぜ

今回は以上だ

BossNeatより

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